桃莉瑠衣です。
ついに挨拶文のネタが切れました。
さて、今回は「歌ってみた」音源をMIX師さんに提出する際、「いかに品質を向上させるか?」に重きを置いて解説していきます。
他の人が出してるのになぜ?
このような内容の記事は、もうあまたの有象無象多数の方々が記事を出しているものですが、僕が改めて記事にしたのは理由があります。
僕は昨年終わり頃に下記のような形で音源募集を行いました。
僕は過去に無償で音源を募集したことがあるのですが、クオリティがあまりにもひどい楽曲が多く、辟易していました。
そのため、一時期に「スマホ内蔵マイクにて録音された音源」の一時受付休止及び当該記事の作成をしたものです。
というわけで、「これは最低限気をつけてくれ」というものを列挙していきます。
録音後にちゃんとチェックしていますか?
MIX師さんに提出する前に、まず自分の音源をちゃんとチェックしましょう。
ありがちなものとしては「音程のズレ・外れ」「リズム・タイミングのズレ」「ノイズ」など、自分でチェックできるものはいくらでもあります。
それらを放置したまま提出して「MIXでなんとかできませんか?」(厳密にはDAWの各種機能や外部プラグイン)と言われても、限界があります。
いくら高額なDAWを使い、プラグインを駆使してもどうにもできない部分はあります。
いくらゲインを上げてオートメーションを描いてプラグインを挿しても、失われたものは戻ってきません。
↑セットで5万円の「これがあればなんでもできる」みたいなプラグインですが、それでも限界はあります。
提出する際は「最善を尽くす」、これが重要です。
適当な音源を渡されても「適当に歌った分のツケ」は、EQや各種エフェクトを使うと逆に浮き彫りになってしまいます。
リリースを前提としたいなら、そのために「作り込む」ことが重要です。
「ただ聞くだけ」がチェックではない
「チェックすればいいんでしょー」なんて思っている方がいらっしゃるかと思われますが、
ただ聞き流すだけなら誰でも出来ます。
上記に挙げた3つ(プラスして後にもうひとつ挙げますが)がないか、ちゃんと録音するごとに聞いて確認することが肝要です。
そして録音が終わったら、通しで聞いて再確認。
こうした二重三重のチェックを行うことで、品質のよいボーカルを録れます。
案外重要な「子音」
さて、先程挙げた3つ以外に重要なものが「子音」です。
「か」をローマ字で表すと「ka」になりますが、そのうち「k」が子音にあたります。
「a」は「母音」といいます。この「子音」がぼやけてると、なーんか間抜けな感じになります。
これは録音する時点で収録できていないと、後の工程ではどうにもなりません。
むしろその状態でコンプなどをかけると「あっ子音がねえやこれ」って初めて気づきます。マジで。こういった細かなチェックを怠ると、出来が本当にパッとしなくなります。
録音の前に気をつけたいこと
「この曲好き!!録音しよう!!」・・・の前に。
その「歌いたい曲」を、ちゃんと歌詞を見ながら聴き込んでみてください。
そして「ボーカル部分のメロディ」や「リズム」も意識してみましょう。
原曲でもカバーでも、「お手本にしたい歌い方」の音源をちゃんと聞くことで、歌詞や音程の不明瞭な部分を録音段階で補正することができます。
↑個人でのMIXでよく使われるMelodyne。僕も使っています。それでも外れた音はどうにもなりません。
そして、「歌詞を印刷・または書く」か「別のモニターや端末に映す」等の方法でなるべく歌詞を目に入る部分に置くことによって凡ミスを防ぐことができます。
録音段階でちゃんと歌うことによってMIX師さんの作業量も減りますし、「補正する必要がない」=「劣化を抑えて出せる」のです。
それでも間違うことはありますが、これは後述。
録音方法の改善
まず、オーディオインターフェイスやマイクなどの「ハードウェア」な部分はひとまず無視します。
問題のある音源は、そのような機材よりもまず「録音の仕方」に問題があることがほとんどです。
逆にそれを改善しないまま機材を導入しても「粗がさらに目立つ」だけです。
最近のトレンド?「一番ダメ」な録音方法
これは僕だけでなく周囲のMIX師さんからもちょいちょいとお話は聞いていたのですが、「最低な録音方法」が出回っているようです。
これは大昔のことですが、ある音源を受け取って開いて・・・なにかがおかしい。いくら頭を合わせてもズレる。なんなら中間でもズレてる。末尾までズレてる。
あーだこーだやってたら最終的に下部画像の様な千切り状態に。キャベツか。

クライアントさんに話を聞いてみたところ、
「動画アプリに合わせて歌う(録音ソフトは別)」というものでした。
もう一例として挙がったのが「PCに合わせながら携帯で・・・」という亜種も。
断言します。
再生する媒体と録音する媒体を分ける方法は論外です。
難しいことは割愛しますが、アプリを複数使った状態での録音の問題点はまず「ズレ(遅延とかレイテンシとか言います)」がひどくなります。
更に「一発録り強制」状態のため、メンタルにも余裕がなくなり、音程やタイミングの気配りができなくなってしまいます。
そして失敗したらイチからやり直し・・・という悲惨なものになります。
このような録り方はクオリティ低下要素しかないのです。
PCの場合はDAW、Androidアプリは「Bandlab」を推奨
PCとオーディオインターフェイスを持っている場合、それらに付属している「DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)」をお勧めします。
例えばSteinberg/ヤマハの場合は「Cubase AI」、Presonusなら「Studio One Artist」が付属されており、Webサイトからダウンロードする形式になっています。(IFのメーカー・製品などによって異なります)
ライセンスやダウンロード方法がWebサイトや本体付属の紙に書いてあるので、指示に従ってダウンロード・インストールを行いましょう。
USBマイクや中古のオーディオインターフェイスなどでDAWがバンドルされていない場合は「Cakewalk by Bandlab」や「ProTools First」、「StudioOne Prime」など無料でダウンロードできるDAWがあります。
スマートフォンでの録音の場合、僕が一番推しているのは「Bandlab」というアプリです。(Google Playストアに飛びます)

このアプリは名前の通り、先述の「Cakewalk by Bandlab」と同じ企業がリリースしているもので、「スマホ用DAW」としての機能がちゃんと盛り込まれています。
実は「PC用DAW」と「Bandlab」の共通点として「外部からダウンロードした音源を取り込める」点があります。
実はこれが一番大事なのです。
DAWの操作方法の把握、そして時短を図る
これは僕個人も昨年冬ごろまではできていなかったのですが、「操作方法を把握する」というのはとても大事です。
例えば「録音・再生の停止はどうやるか?」「パンチ(後述)ってどうやるの?」「音源のインポートはどうやるの?」等々、やることはいっぱいあります。
その中でどうしても作業ロスは生まれます。それを埋めるにはどうすればいいか?
例えばPC環境の場合は、マウスで操作するのをやめ、キーボードショートカットに切り替えていくのをおすすめします。
例えばStudio Oneの場合、ざっとした流れで言うなら↓
インスト音源のインポート:Ctrl+Shift+O
録音トラックの追加:T
録音:*(テンキー)
停止:Space(再生の開始・停止も出来ます)
ステムをエクスポート:Ctrl+Shift+E
といった具合です。
ショートカットキーの数はかなり膨大ですが、使う部分を少しずつ覚えていけば案外いけます。
あとは予算に余裕があるなら、多ボタンのゲーミングマウスにキーを割り当てるという方法もあります。
僕がStudio Oneを使っていた当初は録音やズーム等のキーはこちらに割り当てていました。

録音時はオフボーカルと自分の声を「同じアプリ・ソフト内で」完結する
スマートフォン録音では具体的なアプリの名前をひとつだけ挙げましたが、要は「同じアプリ内で完結する」のであれば、実はどれでもいいのです。
同じようなソフトだと「TuneMe」というアプリもあります。
ただ、機種などによって相性がありますので、どっちも合わない場合もあります。
同じDAW・ソフト内でオフボーカル音源を読み込ませて、それに合わせて歌う。
これによって先程挙げたズレッズレのキャベツ音源を生み出すことはなくなります。
ただ、それでも固有のズレは生じるので、設定項目から「レイテンシ修正」などを行いましょう。

そしてイヤホン・ヘッドホンは無論必須です。スピーカーから垂れ流されたオフボーカル音源が入ってしまいます。
ノイズ対策について
録音環境や機材の特性上仕方のないノイズもありますが、人為的なノイズも当然発生します。
ポップノイズ(「パ」などを発音するとボフッとなるノイズのことです)や、マイクに物が当たったり、スマホが落下したりすることによるノイズは極力抑えてください。
マイクやスマホは安定した場所に置きましょう。
ポップノイズに関しては上記のような専用のフィルターがあります。
こちらを買ったほうが安牌かもしれませんが、自作で作った例(針金ハンガー+ストッキング等)や、マスク着用によって軽減されるという報告もあります。
また、マイクに直接声を当てるのではなく、多少上下にずらした状態で録音することで軽減されます。
ダイナミックマイクを使用している際は、「ある程度離し、鼻の上あたりに配置する」のが丁度よく録れるようですが、各々の機材によって異なります。
コンデンサマイクの場合は周囲の環境音を拾いやすいので、なるべく冷暖房や空気清浄機、PCなど騒音の発生場所から離したり、電源を切る・静音モードにする等の管理をすることをお勧めします。
「一発録り」にこだわらずパートごとで
これは先程と同様、どんなに機材を揃えても拘ると駄目になるポイントです。
「一発撮り」は高度な技です。
上記の動画はレゲエの一発録りです。(Rec開始から再生されます)
録音する際の基本は「パートごと」の録音です。
例えば下記の画像は「乙女解剖」の音源をパート分けしたものですが、冒頭→Aメロ前半→Aメロ後半→Bメロ→サビ前半→サビ後半、というふうに分けています。

例えばこれを一発録りでガーーーッと歌い上げてしまうとなると、精神的なプレッシャーが相当なものになります。その弊害としては、
「マイクと口の距離や声量を一定に保つことができない」
「疲れたりミスしても中断や水分補給ができない」
「録れた音源にミスやノイズが発覚しても手直しが事実上不可能」
と、デメリットしかありません。
基本はパート分けで録音するほうが負荷が少なく、クオリティを上げられます。
間違えたらその箇所「だけ」を歌う
録音途中で間違えたり、噛んだりした場合はどうするか?
その箇所「だけ」を歌えばいいのです。
PCの場合、大抵のDAWには「オートパンチ」という機能が実装されているため、間違えたところの範囲を指定して所定の設定を行えば簡単に出来ます。

スマホ録音で先述の「Bandlab」の場合、間違えた箇所の始点と終点に線を合わせてスライス→削除。
あとは別トラックで録音してから上手いこと合わせれば入れ替えができます。

まとめ:何より「録り音」に最善を尽くすこと
宅録の場合、商業音源のようにエンジニアさんがつくわけでもなく、レコーディング時は自分でやらなければいけないことが多いです。
「自身の裁量次第で質の良し悪しが決まる」と言ってもいいでしょう。
その段階で最善を尽くさずに雑な音源を録ってしまえば、後々に影響が出るのは明白です。
そこをちゃんと作り込むのが大事、というのをお伝えしたくてこの記事を書いた次第です。
次回→歌ってみた品質向上講座②「楽曲の選定」
おまけ:スマホ録音を強化できる機材
↑最後にハードウェアに触れておきますが、3.5mm4極接続に対応したインターフェイスがあります。
※一部非対応の機種もあるため、購入の際はレビューなどを参考に。
外部電源を別で使う方式で、ファンタム電源も使えます。
マイクも安価で配信用途などに使えるものが出ているので、これを組み合わせることで録音環境の構築が安易にできます。
コメント