はろーん、桃莉瑠衣です。
今回は「歌い手・MIX師など活動者におすすめのPC」というテーマの記事でございます。
例えばスマートフォンから入って、「そろそろPCが欲しい」とお悩みの方がかーーーーなりいらっしゃると思います。
そんな中で、ひとつのガイドラインとしてこの記事で紹介していきたいと思います。
ちなみに、後述の前提条件でお話しますが、「色々やるのを見据えた上でのスペック選定」のお話になります。
なので、ここはあくまで「一例」として捉えていただけると幸いです。
が、後々詰む数は減ると思います。それは筆者が保証します。
活動者がPCを持った際にありがちなこと
まず、PCのスペックを選定する上での前提条件をお話します。
これは歌い手さんの場合なのですが、「録音だけだし安いPCでも大丈夫でしょ?」と思うかもしれません。
ですが、それはハッキリいうとありえません。
言ってしまえば、使うソフトなどによっても違いますし、活動をしていくうちに色々と「欲」が出てきます。
ここで安いPCを選んだ場合に詰む例をご紹介します。
DAWの要求スペック
ソフトウェアの種類が違えば、当然要求されるスペックも違います。
主要DAWの動作に必要なスペック
DAW | CPUスペック | メモリ容量(カッコ内は推奨容量) |
Presonus Studio One 5 | Intel Core i3/AMD A10プロセッサ以上 | 4GB(8GB) |
Steinberg Cubase 12 | Intel Core i5(第4世代)/AMD Ryzen | 8GB |
Avid ProTools 2021.12 | Intel Core i5以上 | 16GB(32GB) |
Image-Line FL Studio 20 | IntelまたはAMD(特に指定はなし) | 4GB |
Ableton Live 11 | Intel Core i5/AMDマルチコア | 8GB |
こうやって見ると、CPUは「Core i3~i5クラス(AMDの場合はRyzen5以上)」、搭載メモリは8GB程度がボーダーラインとなりますね。
なお、この表にあるのはあくまでも「必須環境」なので、最低限これだけ揃えればギリギリ動く程度のスペック目安となります。
メモリ容量は表の括弧内の「推奨容量」を目安にしましょう。

MIXもやりたくなる
歌を録音してMIX師さんに依頼するだけなら最低限でもいいかもしれません。
しかし、MIXを自分でやってみたくなると話は変わります。
MIXをする際にはDAWの他に、録音したトラックに色々プラグインをブチ込んだり、ピッチ補正をしたりするので、必然的にPCの負荷は上がります。
そこで安く済ませたツケが返ってきます。
動画をつけたくなる
MIX師さんに依頼をしたとして、その音源が返ってきたら投稿する場所といえば、だいたいYouTubeかニコニコ動画です。
となると、返ってきた音源を動画にする必要があります。
例えば本家動画に合わせる形であったり、自作で1枚絵に歌詞を載せるだけとか。
そうなるとそこらへんの激安PCではアウトになります。
書き出しが遅い、プレビューができない、そもそも動画編集ソフトが開かない等々。
これをいちいち外注するのも手間ですし、自分でやってしまったほうが楽だったりします。本家合わせなんか特に。
ゲームに誘われる
活動者コミュニティに入るとよくあるのがこれです。正直上2つなんかどうでもいいです。(?)
代表的なものだと「Apex Legends」や「VALORANT」に代表されるFPSゲームなんかですね。
他には「Among Us(人狼ゲーム)」「雀魂(麻雀)」などもあります。
ゲーム単体のスペックはタイトルによってまちまちですが、これをDiscordでVCやりながらと考えると、そこそこのリソースを食います。
ちなみに、「Apex Legends」を例に取ると、ある程度のグラフィック性能が必要な上、なんとストレージ容量を約100GB消費します。
そこらへんの激安で転がってるPCでは到底足りません。
で、何を買えばいいの?
これに関してはズバリ、簡単に言います。
「Windowsのデスクトップ機」です。
※後半にノートPCのお話もしてあります。
スペック目安
CPUはIntelプロセッサ(i5/i7程度)
CPUはDAW自体、またはプラグインを動かすにあたって重要なパーツなので、ここは最低でも6コアは必要でしょう。
また、使用するDAWやオーディオインターフェイスを選ばない点から、Intel製プロセッサをおすすめします。
DAWに関しては、AMDのRyzenに正式対応したものが多いですが、オーディオインターフェイスの場合はUniversal Audio ApolloシリーズやRME・Antelope製など、AMDプロセッサでの動作をサポートしていないものがあります。
これら上位のインターフェイスは初心者のうちは手にする機会が少ないものですが、続けていくに従って視野に入っていくものでもあるので、最初のうちにこれらの導入を見据えて動いておくのもアリです。
また、DAWの中でもAvid製のProToolsは頑なにAMDに対応しようとしない頑固っぷり。もしProToolsを使おうと考えているなら真っ先に除外してしまいましょう。
メモリは16-32GB
最低でも16GB、出来れば32GBほど積んでおきましょう。余裕が違います。
自作をする場合は、「規格やクロックその他の数値よりも容量優先」で選びましょう。
メモリには容量だけではなく
「規格(現在主流になっているのはDDR4とDDR5)」
「メモリクロック(Amazonでは「メモリ速度」と表記されています)」
「タイミング(主にCASレイテンシー(略称CL))」
など、実は様々市場に混在しています。
勿論クロックが高いほうが値段は張りますし、タイミングに関しては数値が小さい方が高額な傾向があります。
実際に市販されているメモリの例
Crucial CT2K16G4DFRA32A – \13,790
DDR4 32GB(16GB×2) メモリクロック3200MHz CASレイテンシー(CL) 22
G.Skill F4-3600C18D-32GTZR – \30,500
DDR4 32GB(16GB×2) メモリクロック3600MHz※ CL18
Kingston KF552C40BBK2-32 – \36,558
DDR5 32GB(16GB×2) メモリクロック5200MHz※ CL40
メモリクロックに※のついているメモリは、マザーボード側でXMPというプロファイルの読み込みが必要です。
昨年11月にIntel第12世代が発売されたと同時にDDR5メモリも流通し始めましたが、こちらも対応マザーボードが必要で表にある通り高額です。
私が検証してみたところメモリクロックを変更したことによる差はほとんどなかったので、あまり気にせずに選びましょう。
ただ、ゲーミングメモリはLEDなどの装飾があったり、デザインが格好よかったりするのでディテール重視で選ぶのもアリでしょう。
ストレージはSSD512GB-1TB、倉庫用のHDDも必要
ストレージは「512GB以上のSSD(できれば1TB)」。
SSDの規格は「SATA」と「NVMe」の2種類がありますが、価格面でのアドバンテージが両者で皆無なため、高速で読み書きができる「NVMe」をおすすめします。
また、Intel11世代以降のCPUやRyzen(Zen2以降)を選択する場合は、予算に余裕があればPCI-Express Gen4対応のSSDをおすすめします。
そして、MIX作業や録音・動画作りにおいては大量のデータを保管することが予想されるので、倉庫用としてHDDを別で用意しておくのをおすすめします。
HDDの選び方に関してはCMRだのSMRだの色々ありますが、回転数が遅めのモデルを選んだほうが静粛性は高いです。
その分読み書きの速度は多少遅くなりますが、倉庫用として使うなら申し分ない程度かと思われます。
モニターは1920×1080でいいので2枚あると便利
モニターはめったくそ迷うところですが、2枚あると便利です。
4Kモニターをドーン!!でなくとも、FullHD(1920×1080)でいいので2枚あったほうが作業効率が良いです。
ただし、マザーボード内蔵グラフィックでやろうとすると物理的に2枚接続できないこともありますので、グラフィックボードが必須になる場合もあります。
あと基本的に場所をとるので、空けられる方限定ですね。
実はDAWにもグラフィック性能は必要。
グラフィックボードはゲームをやる上で必要…ってだけではありません。プラグインによっては画面の表示にGPUを使用する場合があります。

ひとまず安いものでいいですし、状態がいいなら中古のものでも構いません。
しかし、中古のグラボは目利きができないとそれなりにリスキーなので、自信がない方は新品を買ってしまいましょう。
購入の選択肢
さて、次は購入の方法なのですが、主に4つの選択肢があります。
・PCを自作する(DIY)
・BTO(注文する際にパーツを指定して購入するタイプ)
・メーカー製PC
・中古PC
自作PC
こちらは「自分でPCパーツの選定を行い、組み立てる」作業が必要になります。
自分でやろうとすると骨が折れますが、例えば「パソコン工房」や「TSUKUMO」などの実店舗がある場合は、予算と用途を店員さんに伝えれば見積もりを出してくれることもあります。
また、「TSUKUMO」の場合は自作代行サービス(別途工賃がかかります)もあるので、自分で組むのが不安な方は頼んでみるのもアリでしょう。
構成例
現行スペックで組む場合、このくらいがいいでしょう。(あくまで個人的な所感です)
現行DDR4それなりの構成(jisaku.com 自作PC見積もり)
上記の構成だけでなく、無限にあるといっても過言ではないので、PCショップが近くにある方や自作PC周りについて相談できる方が周囲にいる場合、相談してみるのもよいでしょう。
BTO
BTO(Built-to-Order)とは、ある程度組み上がっているPCの中身をカスタムして発注し、購入する手法です。
代表的な販売店として以下があります。
「組み上げるのが面倒!」という方にはBTOという選択肢もアリですが、CPUの冷却が甘かったり(ここがカスタマイズ可能なところもありますが)、廉価版のマザーボードが使用されていることがあり、トラブルの対処がしづらいこともあります。
ですが、PCをまるごとサポートしてくれるため、何かしらのトラブルが起きたときに頼れるという点は大きいです。
メーカー製PC
MSIやLenovoなど、ゲーミングPCが取り揃えてあるメーカーをおすすめします。
逆にNECや富士通など国内メーカー製のPCの場合は、余計なアプリケーションが山ほど入っていたり、ドライバー周りが面倒だったりするケースが多いため、避けておいたほうがいいでしょう。
中古PC
こちらは前提知識が自作PC並に必要になってくるため、初めてPCを買う方にはあまりおすすめできません。
この中でも特段酷いのは、メルカリやラクマなどのフリマアプリで「ゲーミングPC」と謳って販売されているボロを掴まされる危険性が高いということです。
フリマアプリやオークションサイトで購入する際は、本当にそれなりの目利きと知識が必要になります。
もし予算的に厳しいなどの理由で中古PCを購入する場合は、CPU型番やメモリ容量、グラフィックボードのグレードなどを予め調べた上で、PCショップなどに並べられているものを購入することをおすすめします。
「中古品をショップで買う」ことの意味
中古品を取り扱っているショップは、基本的に他のユーザーから買い取ったものを販売するわけですが、その前に「買い取り査定」をして、買取金額を提示します。
PC本体やパーツの場合、査定に長い時間をかけて、正常に動作するかどうかの確認を行っているため、大外れを引く確率は格段に下がります。お金が絡むので当然ですね。
そのため、中古品は多少高くてもショップで買うほうが安全というわけです。
1ヶ月~3ヶ月と短いですが、保証もついてきますし。
ノートPCという選択肢
基本的にデスクトップPCを推奨していますが、「どう頑張っても置き場所がない!」「スタジオなどに持ち運びたい!」と考えている方は、ノートPCという選択肢も一応あります。
しかし、ここでデメリットをいくつか挙げます。
ノートPCのデメリット
CPUの性能に限界がある
デスクトップPCと違い、ノートPCの場合はCPUが同じi5やi7系統(Ryzen含む)とはいえ「低電圧版」という、性能より省電力に振ったものが使われています。そのため、デスクトップ向けと比較してコア数・スレッド数が少なかったり、動作周波数が低めになっていたりする傾向にあるため、パフォーマンスが低下します。
なお、設定次第でパフォーマンス面は改善することもありますが、その場合は電池消費や寿命の短縮とトレードオフとなります。
メモリやストレージの増設ができない機種が増えてきている
例えば、最初にメモリ8GBの機種を購入したあとに、ソフトの要求スペックなどの問題でメモリを増やしたい!ってなった際、特に薄型モデルのノートPCの場合はメモリを増やせない場合が多いです。
また、ゲームをする場合やMIXしたデータ・動画を作成した場合に圧迫されるストレージも増設不可な場合もあり、注意が必要です。(特にSSDの場合は余裕がないと動作パフォーマンスにも影響します。)
ノートPCを購入する際は、スペックがなるべく高いものを選ぶか、メモリやストレージの増設が可能なものを選びましょう。(但しバッテリーなどのコネクタを外さなければいけない機種もあるので注意)
接続端子の数が少なく、拡張性に欠ける
ノートPCの弱点の中でも大きなものはこれです。
こちらも特に薄型モデルにありがちなのですが、
・有線LANポートがない(Wi-Fiの場合は通信速度の低下や遅延の増大可能性あり)
・USBポートが少ない
など、モデルによって多種多様ではありますがデスクトップと比較して拡張性に欠ける点は否めません。
ノートPCのメリット
デメリットから先に挙げてしまいましたが、メリットも挙げておきましょう。
省電力のため電気代が安い
CPUや、GPU(グラフィックボード)がついている場合はそちらも省電力仕様となっているため、パフォーマンスが多少落ちる代わりにデスクトップPCと比べて消費電力が低く、結果として電気代が安くなります。
部屋間の移動や外への持ち出しがしやすい
PC本体がまるごとコンパクトに収まっているため、部屋間の移動や外に持ち出すのが容易です。
そのため、模様替えもしやすいですし、スペースをとらないため周辺機器も置きやすいです。
使い方によってはデスクトップPCと同じような使い方もできる
スペックに多少制約があるとはいえ、外部モニターを接続したり、マウスやキーボードを別で購入した上でノートPCを閉じた状態で運用する「クラムシェルモード」も可能です。
ただし、これをやる場合はモニターを接続するためにHDMI/DisplayPort等に接続する手段やUSB端子がそれなりに必要になりますので、それなりに拡張端子のあるUSBハブを別個で購入したりする必要があります。
Macは「用途が限定されているなら」アリ
近年、Intel MacからApple Silicon(M1/M1 Pro/Max/Ultra)に移行されたことでスペックが上がり、巷で話題になりました。
現在DTM関連で使用者の多いMacですが、こちらは用途が定まっていない場合は選択を控えたほうがいいかと思います。
というのも、M1プロセッサシリーズはCPUの中身がIntel/AMDで使われてる「x86」ではなく「ARM」というものになっており、動きの仕組みも全然違います。
そのため、ソフトウェアやハードウェアのメーカーが対応に追われており、未だに対応していない製品もあります。
なので単騎での使用は現時点では使える幅が狭くなってしまうため、回避したほうがいいです。
とっくにもう1台PCを持っているとか、ゲームをあまりしない・使っても録音やMIX、動画編集など用途がハッキリしている場合は選択肢の一つに入れてもいいかと思います。
ただ、スペックは盛れるだけ盛っておいたほうがいいです。
筆者の経験として、かつてMacBook Air(7コアGPU/8GBの最小構成)を使用していて、液タブを購入した際にUSBとHDMIの外付けドックを付けたにもかかわらず満杯になり、おまけにクリスタで線を移動させた際にカクつく現象が起こり、スペック不足を感じました。
予算に余裕があるなら、なるべくスペックを盛ったり上位モデルを選ぶことをおすすめします。
まとめ
さて、ここまであくまで「筆者流」のPCの選び方をご紹介いたしました。
異論はあるかと思われますが、ここで一つ今まで書いたことを多少ぶっ壊してしまうことを言います。
「用途が合うならなんだっていい!!!!」
別にAPEXやらないならストレージ削ってもいいわけですし(ただ音源やエフェクトをたくさん入れたい場合は別ですよ)、DTM関連しかやらないならもっとスペックを削ってもいいわけです。
「俺は歌しかやらねえ!!機動性重視!!」とかならスタジオに持っていきやすいノートPCを選んでもいいわけですし、「UAD?使わんし知らん!!」とか「トラブル起きても自分でなんとかする!!」っていう気概のある方ならそれなりに評判のいいRyzenを選んでもいいわけですし、「某喫茶店でドヤりてえ!!」とかなら別にMac選んでもいいわけです。
ここに書いたのは、あくまで歌い手やMIX師としての活動から何かしら発展する可能性を考慮してのPC選びです。
麻雀でいうところ「一番受け入れが広い待ち」といえばいいでしょうか。(麻雀がわからない方はすみません)
PC選びに「これがベスト!!それ以外はクソ!!」ということは、はっきり言ってありません。
いろいろ調べてみて、自分で考えて、選ぶことをおすすめします。
それでは。
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